モバイルアプリ開発

スマホアプリ『UniCo(ユニコ)』の取り組みと新たな機能に関する実証実験

富山大学生活協同組合様

富山大学生活協同組合 専務理事 國見伸行様、NRIネットコム コー・ネット事業推進部 其田 彩乃


大学生協で電子マネーを活用するためのスマホアプリ『UniCo(ユニコ)』の取り組みと新たな機能に関する実証実験(UniCoLab)について、富山大学生活協同組合の國見様とNRIネットコムの担当者に伺いました。

スマホアプリの新たな機能に関する実証実験の背景、概要


スマホアプリ『UniCo』を導入された経緯についてお聞かせ下さい。


國見様:富山大学の学生証は電子マネー機能付きICカードで、大学生協の組合員証と一体化しています。大学内では電子マネーを利用した決済率が8割と高く非常に普及していましたが、利用者にポイントを還元するという一般的な機能の他に、何か楽しいサービスが提供できないものかと考えていました。

いくつかの大手電子マネーサービスでは、魅力的なキャンペーンを展開したり、公式サイトでユーザーに有益な情報を発信したりと、電子決済だけではない付加価値のあるサービスを提供しています。そうした毎日の学生生活がちょっと潤うような温かみのあるサービスをやってみたいと模索していたところ、2015年にNRIネットコムさんから『UniCo』というアプリをご紹介いただき、当方のニーズにマッチすると思い導入することにしました。

アプリ導入にどのような効果を期待されていましたか?

國見:学生の購買行動を見ていると、さまざまなアプリで配布されるクーポンの利用率が高い印象があったので、『UniCo』導入時には割引クーポンを配布して、アプリ使用の普及と同時に店舗の利用が増加することを期待しました。買い物をする度にポイントが貯まる仕様は従来と同じですが、ただ貯めるのではなく、ちょっとした楽しみもあるようなゲーム性があるといいともお伝えしました。

其田:『UniCo』では、電子マネーの残高を表示したり、アプリ内でポイントを貯めることができたりという機能がありますが、そのほかに「宝探しゲーム」を実装しました。好きな宝箱を選んでタップすると、ポイントを取得するためのクエスト(ゲームとしての課題)が表示され、ミッションが指定されます。例えば、「購買店限定!お菓子、カップ麺、スープ、栄養補助食品いずれかの購入でunicoポイント9ポイントゲットできます」といったものです。通常の買い物よりも高いポイントを取得できるので、楽しみながらポイントを貯めることができ、さらに店舗の売上アップも見込める仕掛けでした。國見専務には、「ぜひやってみたい」と、積極的に導入いただきました。
國見様:大学生協の中でも導入は早かったと思います。実際に学生たちが楽しそうに使ってくれているので効果も実感しています。

そうした段階を経て、NRIネットコムはどのような新たな機能と実証実験を提案したのですか?


其田:國見専務が位置情報を利用したゲームアプリに興味をお持ちで、「UniCoの使用をきっかけにユーザーの行動が変化したらもっと楽しいだろう」とおっしゃっていました。そこで、ユーザーの行動変容を促す仕掛けをつくると同時に、購買行動を把握するデータを収集して分析する実験をご提案しました。新たな機能の実装を検討するための実証実験なので、どのようなアウトプットが出せるか未知数ではあったのですが、「新しいことにチャレンジしたい」という國見専務のお力添えもあって実施の運びとなりました。

実証実験『UniCoLab(ユニコラボ)』の効果

NRIネットコムが2018年10月に実施した実証実験はどのような内容でしたか?

其田:iOSユーザーに対して来店時にクーポンを発行するアプリ『UniCoLab』を実験開放しました。アプリをインストールしたスマホのBluetooth機能と生協店舗に設置したBeaconによって、プッシュ通知でクーポン獲得のお知らせが届くようになっており、ユーザーは来店することでクーポンの取得と利用ができるという仕組みです。17日間にわたり、4つのキャンパス10店舗で実施しました。食堂では「お好きな小鉢メニュー30円割引」、購買では「お好きな焼き立てパンを30円割引」など店舗によってクーポン内容を変え、購買促進につながるかどうか、利用動向を分析しました。

実際に利用動向データを分析してみて、いかがでしたか?

國見様:店舗に来店したらクーポンが獲得できるという仕掛けに楽しさを感じてもらえたのか、今回のクーポン配布で該当商品を初めて購入したというユーザーがいたことが興味深いですね。また、『UniCo』でクーポンを発行しても、なかなか書籍の売上につながらないのですが、『UniCoLab』では、書籍のクーポン利用率が予想以上に高かったことは嬉しい驚きでした。学生さんの本離れに対応するのは、生協のミッションの一つでもありますから、今後の活用を検討していきたいと思います。「特定の場所に行くことでクーポンを獲得できる」というプロセスは大学生の行動と親和性が高く、今後のサービス展開においても応用できる可能性が大いにあると感じました。

今回の実証実験では、NRIネットコムがコンサルティングパートナーともなっているAmazon Web Service(以下AWS)を活用しました。どのような効果がありましたか?

其田:AWSを利用することで、今回の実証実験は非常にスピード感を持って進めることができました。一般的に、アプリに別のクーポンを実装するとなれば、開発に数ヶ月以上かかることもありますが、AWSを使用するとさまざまな工程が短縮できます。また、実験結果の検証もAWSからのデータ取得がスピーディに行えるので、集計や分析までスムーズに進めることができて、翌月早々に検証と振返りを行うことができました。今回の実験では、AWSのサービスを組み合わせてバックエンドを構築しました。この手法は、従来からよくある、サーバを立ち上げて一からアプリをインストール・設定する方法ではなく、サーバレスアーキテクチャと呼ばれています。構築・運用面のメリットも大きく、スピード感に手応えを感じています。今後POSデータの取得と分析などに活用できないか検討の余地はあると思います。

NRIネットコムについて

『UniCo』と『UniCoLab』を通してNRIネットコムのサポートはいかがですか?


國見様:大学のシステムインフラから生協の売掛システムまで、NRIネットコムが構築した仕組みにお世話になっており、われわれにとって非常に重要なパートナーだと認識しております。直接お会いして話す頻度が高いのですが、いつも丁寧な対応をしていただき、われわれの意見もきちんと受け止めて下さるので大変ありがたく感じています。システムの専門的な案件について大学側と打ち合わせをした際も、間に入って双方の要望を聞いたり、分かりやすく噛み砕いて説明して下さるので助かりました。エンドユーザーに寄り添ってもらえる安心感がありますね。欲を言えば、とても真面目な方が多いのですが、少し遊び心のある提案があったら楽しいですね(笑)。
其田:お役に立てて嬉しく思います。國見専務は、われわれの提案に対して率直な意見を述べて下さるので、こちらとしてもニーズをつかみやすく連携しやすいと感じております。富山大学生協様との取り組みは、円滑に協働できていると社内でも評価を受けております。「遊び心のある提案」も、今後、前向きに検討いたします(笑)。

実験によって今後の取り組みについて具体的なイメージはできましたか?

國見様:今回は店舗据置きでBeaconを導入しましたが、クーポン獲得の場所をキャンパス全体に拡大したら面白いかな、などと考えています。宝さがしゲームをアプリではなく現実世界で実行するような、楽しいサービスを提供していきたいですね。同時に、より詳細なデータを取得して、ユーザーの利用動向をさらに分析したいとも考えています。実験結果からさまざまな可能性を感じることができたので、新たなサービス展開についてもNRIネットコムにお手伝いしていただきながら、実現していきたいと考えています。

【事例解説:UniCoLabのAWSサーバレスアーキテクチャ】

サーバーレスアーキテクチャとは、利用者によるサーバのプロビジョニングやメンテナンス、耐障害性の確保が不要なサービスを利用した構成であり、AWSの提供するマネージドサービスを活用することで、このサーバーレスな環境を提供することができます。

『UnicoLab』の実証実験は、下図のような2層のサーバーレスアーキテクチャに則って設計を行っています。これは利用したリソースや処理時間をもとにした支払いであるため、低コストでの環境構築が可能となりました。また、マネージドサービスを活用していることから、素早く環境を構築して実証実験をスタートさせることができました。
NRIネットコムでは今後、『UnicoLab』で実現した取り組みを『Unico』プロジェクトへ展開することにより、学生と店舗の両方に付加価値のある本番運用につなげたいと考えています。

UnicoLabプロジェクトで構築したサーバーレス環境のイメージ


※図中で使用しているロゴマークの権利はそれぞれの所有者に帰属します