─新たな店舗・業務形態へのチャレンジ─ 大学生協へのタブレットPOS導入

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さまざまな店舗形態・業務運営に最適な店舗作りへのチャレンジを始めた大学生協では、タブレットPOSという新しいハードの活用や、故障時の対応内製化という方向へかじを切った。労働力不足という日本が構造的に抱える社会的問題も念頭に、セルフレジや無人店舗など、チャレンジを続けていく大学生協について、NRIネットコムが支援した事例について紹介する。


コー・ネット事業推進部 上級システムエンジニア 田中 宏和

大学生協におけるPOSシステムの現状

国内のPOSレジは、大手の国内メーカー3社が多数を占める状況となっている。従来の製品はハード価格が高いため、ハードウェアの保守契約を結んで故障に備えるのが一般的である。そのため導入台数が多いと、ハードウェアとその保守にかかる費用が膨らんでしまい、費用面での課題があった。

大学生協の店舗は、文具などを扱う購買店、教科書・雑誌などを販売する書籍店、旅行・教習所などを扱うサービス店、飲食関係の食堂・コンビニエンスストアなど、多様な業態に及ぶ。しかし、POSレジについては、大手国内メーカーの1 機種にロットを集約することで、コストを抑えてきた。店舗により異なる業態に対応するため、アプリケーションはそれぞれの画面を開発して対応しているが、ハードウェアは大型POSレジであることから、小型店舗では設置場所に困ることも多かった。また、国内メーカーは自社でハードウェアの設計を行うため、大学生協の店舗ニーズを設計に反映することは難しい。そのため、設置したPOS レジを店舗の外へ持ち出して利用できないなど、運用面の課題もあった。

このような費用面、運用面での課題を解決すべく、NRIネットコムが支援している大学生協(全国大学生活協同組合連合会所属で東京地区を除く)では、台湾メーカーのタブレットPOS の採用にチャレンジした。

タブレットPOSの導入

台湾メーカーは、比較的少ないロットであってもオーダーメイド的な対応を行ってくれる。今回の大学生協の案件でも、設計段階からメーカーの担当者が店舗を見学し、現場の要望を取り入れて製品化が行われた。タブレットを採用することでPOSレジは小型になる。さらに現金を扱わなければ、現金を保管するキャッシュドロアも不要になり、設置スペースも小さくなる。実は大学生協では、POSレジ決済のスピードアップのため、以前からICカードを使った独自の電子マネーを運用しており、店舗によってはその決済率は90%を超えている。そのため現金の取り扱いは、もはや重要なテーマにはならない。そこで、購買、コンビニエンスストア、書籍、サービス店舗の大半は、タブレットにPOSレジ機能のアプリケーションを入れたタブレットPOSへの切り替えを決めた。一方で食堂では、多くのメニューから決済すべきメニューを素早く選択する必要があるため、メニューが一覧できる大画面がよいとして、従来の大型POSレジを継続利用することにした。このように、利用場面に応じた2機種を使い分けることで、運用面の課題へ対応した。

費用面での課題についても効果が出た。タブレットPOS は安価であるため、故障の際は修理を行わず、大学生協の職員が予備の機械と交換して対処することにした。これによりハードウェアの保守契約が不要となり、保守費用の大幅な削減が実現した。

大学生協ではまた、これまでの課題に対処するだけでなく、新たな活用方法による付加価値の創出にも取り組んでいる。例えば、コンビニエンスストアでお昼にレジ待ちの行列ができるようであれば、タブレットPOSを持ち込んで一時的にレジ台数を増やすことで、待ち時間を減らすことができる。同様に、大学内で学会などの催事があれば、その場所で臨時の店舗を構えることもできる。狭いスペースでも設置可能という特長を生かし、大学内に小規模のサテライト店舗を出店することも可能になる。もし、建屋内に駅の売店のような店舗ができれば、離れた店舗まで行かなくても済むようになる。深夜でも大学内の店舗を安心して利用でき、セキュリティの観点からも有効であろう。さらに、今回導入したタブレットPOSは、タブレットPCとしても利用できる。大学生協では、商品仕入れのため、棚前での発注端末として、既存の専用端末の機能もタブレットPOSに実装を予定している。ピーク時はPOSレジとして、ピーク時以外は発注端末やタブレットPCとして、端末の有効活用ができる。過去の販売実績や数日後の天気予報などをタブレットの画面で閲覧しながら、それらの情報を参考にしつつ発注することもできるだろう。

さらなる店舗の変革を目指して

大学生協でも労働力不足への対応は深刻な問題である。そのため大学生協では、早朝から始まる食堂や、長時間の営業時間を要望されるコンビニエンスストアなどへの対応として、セルフレジや無人店舗の検討を始めている。電子マネーでの決済率が高いことから、現金を扱わない無人店舗の検討も比較的容易なのである。

タブレットPOSの導入で、これまでPOSレジを設置できなかった場所でも、販売の制約がなくなった。これにより決済情報も、より多くのデータが収集できる。現在、NRIネットコムでは、大学生協の店舗利用を促進するスマートフォンアプリ(以下、スマホアプリ)を、利用者向けに提供している。より多くの決済情報が得られることで、スマホアプリ上でさらに踏み込んだ分析・提案が可能になる。リアルな店舗での決済情報をスマホアプリに活用することで、リアル店舗のさらなる活性化につなげていきたい。

田中宏和

執筆者 田中 宏和

POSシステム開発、電子マネーソリューションの企画・立案を専門に行っています。

本稿は、野村総合研究所発行の「ITソリューションフロンティア」2018年8月号に掲載されました。

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