─ デジタルマーケティングツール導入のポイント─ 高価値な顧客体験を創り出すために 2/2

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デジタルマーケティングツールの効果

ここでは、NRI ネットコムが支援したMAツールとDMP の導入事例を、導入効果を交えて紹介する。

(1)MAツールの導入事例

機械メーカーのA 社では、自社機器の導入から10 年が経過した既存顧客に対して、営業担当が訪問することで機器を更新してもらう活動を行っていた。しかし10 年が経過していると、相手の担当者が代わっていて、名刺と資料を渡すだけで時間を費やしてしまうことが多かった。これでは機器の更新につなげるためのフォローができず、顧客から連絡が来ない限り機器更新の検討状況が見えない。そのため、訪問後の営業アプローチが取りにくいことが課題となっていた。

そこでA 社は、オンラインとオフラインの双方から顧客行動を観察し、それぞれの顧客に適した働き掛けができるようにすることを目的にMA ツールの導入を決めた。まず、収集した名刺をリスト化し、Web サイトに誘導するためのお礼メールを送った。同時に、事例やソリューションに関する4 種のダウンロード資料をWeb サイトに掲載した。

活用したデータは、名刺リスト、メール開封状況、Web サイトの閲覧履歴、資料のダウンロード履歴である。MA ツールを利用すると、名刺リストに送った「お礼メール」が開封された時点で、その個人を特定できる。個人が特定されれば、メールに記載されたリンクURL から自社のWeb サイトを訪問したか、資料をダウンロードしたかなどの細かい行動が可視化される。さらに、どの資料をダウンロードしたかが分かるので、顧客の興味や関心を推測することも可能だ。メール開封や資料ダウンロードまでのスピードも、顧客の興味の度合いを測る指標になる。

これら一連の施策によって、営業担当は有望な顧客を知ることができるため、効率的なアプローチが可能となる。商談意欲の高い顧客にとっては、自社の状況に合った商品やサービスについて、自分から働き掛けなくとも適宜フォローしてもらえることは、高価値な顧客体験につながる。なお、メール開封後に複数のWeb ページを閲覧したり、複数の資料をダウンロードしたりする積極的な顧客ほど、成約までのスピードも速かった。

こうして、営業のリソースを主に訪問と名刺収集に充て、その後のフォローをMA 側にシフトさせことにより、全体の効率を上げることもできた。

(2)プライベートDMPの導入事例

一般向けの会員制Web サービスを提供しているB 社では、新規入会件数や、既存会員のリピート訪問回数の伸びが鈍化する状態にあった。そこで、会員ページのアクセス分析だけでは検討材料に乏しいため、パブリックDMP の外部データを活用して、新規入会とリピートが期待できるセグメントの属性(性別・趣味・嗜好など)を探ることにした。

新規会員獲得のためのWeb 広告は、いたずらに多くの人に送るのではなく、入会傾向の強い属性を持つ人に送ることが効果的であることは言うまでもない。そこで、すでに入会している人の登録情報、自社サイトの訪問履歴に加えて、パブリックDMP のデータも活用して適合するセグメントを抽出した。同時に、効果の高い広告を絞り込むこともできるようになり、広告のROI(投資利益率)も向上した。また、広告効果の見込めないセグメントを抽出したことで、運用負荷の軽減にもつながった。

リピート訪問回数を増やす施策としては、自社データの会員ID を使って、会員のWebサイト上の行動を分析することにした。その結果、リピート訪問者は男性に多く女性に少ないことや、数ページだけの消極的な閲覧であっても定期的にWeb サイトを訪問している層があることなどが明らかになった。そこで、リピート訪問する層を広げるために、消極的ながらも定期的に訪問している層を最優先ターゲットとして、SNS やモバイルアプリを活用することで接点を増やすことにした。

B 社では、拡充された顧客接点から得られるデータもプライベートDMP に蓄積し、より大きな「接点価値の輪」の創出を目指している。

デジタルマーケティングの高度化に向けて

すでに述べたように、デジタルマーケティングの高度化とは、「価値の集合体」から「一連の高価値な顧客体験」を創り出すことである。

前述のMA ツールの導入事例では、営業担当が対面で得た顧客情報(名刺リスト)へお礼メールを送ることで、非対面のオンラインチャネルでも顧客個人を特定できるようになった。これによって、Web ページの閲覧や資料のダウンロードなど、オンライン接点上の特定の顧客の振る舞いを知ることが可能となり、営業担当が再び足を運ぶ商談へとつなげて成果を出せるようになった。顧客側でも、メーカーとの接触や商品情報の取得など、一連のコミュニケーションの円滑化という価値が生まれることはすでに述べた通りである。

DMP の導入事例でも同じことがいえる。新規入会の潜在層にとっては、興味を引かれるWeb 広告が目に入ればうれしいし、広告からたどった先にあるコンテンツが自分の興味や関心に合ったものであれば心地よいだろう。既存会員にとっても、普段利用しているSNS などの接点から、タイミングよく有益な情報が得られるサービスは利用価値が高い。

このように、1 つ1 つの価値の連続が、「一連の高価値な顧客体験」につながる。人の興味や関心は時間の経過やライフステージの変化に合わせて移り変わる。変化に対応した価値を提供し続けるためには、データの継続的な更新を含め、データ活用に繰り返し取り組むことが大切である。

マーケティングの本来の目的は、顧客の人生や生活を豊かにすることにあると考える。その本来の目的のために、デジタルマーケティングの高度化に取り組んでいきたい。

柿崎千絵

執筆者 柿崎千絵

デジタルマーケティングのコンサルティングを専門に行っています。
(Web デザイン事業部 フロンティアデザイン課長代理)

本稿は、野村総合研究所発行の「ITソリューションフロンティア」2018年8月号に掲載されました。

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