─ ユーザー視点を重視した画面設計の高度化 ─(塚田一政) ビジネスに貢献するUI/UXのつくり方 3/3

20171211

CASE 2:社内業務画面のUCD

商品発注システムや顧客管理システムなどに代表される社内業務画面は、ユーザーが社員に限定されており、一度操作方法を習得すれば操作が可能なものが多い。そのため、情報の掲載量、一覧性、正確性さえ確保されていれば問題ないとして、利用者の使いやすさは重視されてこなかった。また一般消費者向けサービスのように、画面デザインの改善が売り上げに劇的に寄与するものでもなく、業務画面の改善を行う重要性はこれまで認識されていなかった。しかし社内向けの業務システム画面においても、UCD導入のメリットは多い。

(1)UCD導入のメリット

社内業務画面へのUCD導入のメリットには、以下の2 点が挙げられる。

①画面操作時間の短縮による生産性向上

②新規利用者に対する教育コストの圧縮

仮に1レコード当たり入力に100秒かかる業務があるとする。これを業務の正確性を担保しつつ、1レコード当たり90秒の入力で済む画面デザインに改良すると、業務全体としては10%の生産性改善に寄与することになる。この10%の生産性向上に、多大な投資は必要ない。画面を設計・開発する際に、UCDを導入し、ユーザーモデル、ユーザーの目標・課題に合わせた画面設計を行うことで、10%という数字は十分に実現可能である。

また新規利用者向けの操作研修においても、操作しやすい画面であれば利用ガイドの配布だけで済む場合が多く、その分の教育コストの圧縮にもつながる。

(2)業務画面設計のポイント

社内業務画面は、利用者、利用シーン、利用目的が比較的限定されているため、UCDによって適切な設計ができれば、その効果は社内に波及しやすい。そこで、業務画面にUCDを導入し、効果を得るためのポイントを挙げる。

まず、業務知識と業務フローの徹底的な理解・共有が必要である。

従来は、顧客、エンジニアから提供された機能要件、表示項目、遷移図などを元にデザイナーが画面設計を行う場合が多く、業務に対する理解が不十分なまま画面内の要素(入力フィールド、ボタン、グラフなど)の設計を行っていた。その結果、実際の業務に沿わない、使いづらい画面が量産されてしまっていた。UCDを導入するに当たり、デザイナーが業務について理解を深めることはもちろん、発注側の担当者、エンジニアも含め、業務に関する議論、情報提供を十分に尽くすべきである。

次にパーツレベルでのUI の最新化、最適化を行う。特にWeb技術を使った業務画面の場合、最新のUIパーツがコンポーネント(部品)として数多く提供されており、業務に合ったUI の導入は容易である。

これらの活用によりUIを最新化することで、正確性を担保したまま、社内の作業効率を改善できる。

(3)事例:横スクロールUIの改善

ここでは業務要件とUCDとの関係を、事例を使って解説する。業務画面で多用される表の横スクロールUIの改善策を例として挙げる。

図2左側のように、表を画面の横幅以上に配置し、横スクロールでその表の見える位置を操作するUI である。スクロールバーの操作で全データを表示できるが、操作性は良くない。またスクロール操作は、業務の処理時間を増加させる原因でもあった。

あらためて業務要件を確認すると、この業務画面には以下の業務要件があった。

・ 各項目はすべて必要な情報である。

・ 項目には優先順があり、一覧の中で重要な項目とそうでない項目がある。

・ 利用者によって項目の優先順が異なる。

これらの要件から改善前のUI は最適でないことが分かる。なぜなら、業務の特性や利用者の行動・思考を考慮せず、ただ情報の一覧性のみが重視されていたからである。図2右側の改善策のように、表内の項目を優先順に、かつ利用者ごとにカスタマイズできる機能を設ければ、横スクロールを使わずとも2段テーブルで十分機能するのである。

真のビジネスゴール達成のために

UCDによる画面設計について解説してきたが、UCDを導入しただけで企業のビジネスゴールが達成されるわけではない。利用者サイドの視点を持ちつつも、企業サイドの視点も忘れず、利用者と企業双方の目的達成、課題解決を実現できるようなサービス、システムを世の中に提供してこそ、初めてビジネスゴールは達成される。

従来のような業務要件、システム要件、画面設計という、ウオーターフォール型の開発プロセスはもはや適さない。ビジネスのプロである企業担当者、画面設計のプロであるデザイナー、システム開発のプロであるエンジニアが、それぞれの専門性の上に議論を展開しつつも、それぞれが企業ビジネス理解、利用者理解を一層深め、三位一体の議論を重ねることが求められている。そして、要件検討時において、業務要件やシステム要件と同等に、UI/UX の要件についても、UCD を用いてしっかりと議論されるべきである。

野村総合研究所(NRI)グループの一員として、Webビジネスシステム開発を行うNRIネットコムは、お客さまのビジネスへの深い理解から始まり、要件定義、画面設計、システム開発、仮説検証の一連の流れをワンストップで提供している。本稿で解説してきたUCDの手法を用い、今後もお客さまのビジネスに貢献するWebビジネスシステムを提供していきたい。

塚田一政

執筆者 塚田一政

WebサイトのUI/UXデザイン、アートディレクションを専門に行っています。
(Webデザイン事業部 UI/UXデザイナー)

本稿は、野村総合研究所発行の「ITソリューションフロンティア」2017年10月号に掲載されました。

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