施策のつながりを分析し、効果を最大化 投資対効果を高めるデジタルマーケティング分析

201705

デジタルにおけるプロモーション活動は、企業のマーケティングにおいて必須の活動となった。しかし、各マーケティング施策の「つながり」を分析し、投資対効果を高めている企業は少ない。そこで、本稿ではマーケティング効果を高めるために必要なプロセスと施策例を紹介する。


デジタルマーケティング事業部 デジタルマーケティングコンサルタント 邑川真也

マーケティング施策のつながりを可視化することがなぜ必要か?

現在、デジタルマーケティングは多くの企業が活用している。デジタルマーケティングは、一つ一つの施策で効果を計るのではなく、複数の広告施策を実施した後の効果の相関分析が十分に行われてこそ、費用対効果を最大化できると筆者は考えている。各施策のつながりと効果を可視化し、データに基づいて適正に「分析する」ことが重要である。

デジタルマーケティングの業務を自社内で行う企業もあるが、広告代理店に全て任せる企業も多い。SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)広告はA 社、バナー広告はB社、というように複数の代理店に依頼するケースが多い。

代理店は自分たちが行った施策に関しては責任を負い、広告による効果や気付き、改善点を報告する。企業側は、それぞれの効果を比較し、最も効果があった施策を高く評価し、次のプロモーションの改善を検討する。

しかし、施策の効果は独立して出ているのではない。施策の順番や組み合わせ、相互関係といった施策同士の「つながり」という視点で考えなければならない。例えば、バナー広告のみの場合、集客数は多いが、企業が期待している購入や申し込みが少ない。一方、SNS 広告では、集客数は少ないが購入や申し込みは多いという結果が出ているとき、それぞれの施策の結果だけに注目すると、次回はSNS 広告のみと判断されるであろう。

バナー広告とSNS 広告の相関性はここでは考慮されていない。単体の施策で効果が上がるものもあるだろう。しかしある施策を実施しなければ、他の施策の効果が低くなり、集客が少なくなる場合もある。つまり複数の施策を行っている場合、それぞれの施策のつながりを考慮しないと、全体のゴール達成数が減って費用対効果が低下する可能性がある。

マーケティング効果を考える3つの要素

広告を通して消費者にアプローチする方法を考えるに当たっては、各施策を「ものやサービスを周知する」「欲しい、または利用したいと感じさせる」「購入、あるいはサービスへの登録」という3 つのプロセスに分解して考えるとよい。そして、消費者がこのようなプロセスを一つ一つ進めるようなマーケティング施策を立案するべきである。

さらに施策の立案においては、図1に示すように、各施策のつながりを考慮することが重要である。その上で、以下に示す3つの要素について検討するのが効果的である。

(1)ゴール設定

企業が消費者に到達してもらいたいゴールを決める。EC サイトでは商品の購入、旅行サイトのようなサービスにおいては、サービスの利用や予約申し込みになる。一方で何をもってゴールの達成とするのか、その設定が難しいケースもある。しかしゴール設定ができなければ、あらゆる決定の判断ができなくなる。

例えば商品のブランドサイトで効果を計る場合を考えてみよう。消費者ゴールは店頭での購買となる。販売数はサイト側では計測できないが、こうした場合にも、サイトでクーポンを配布したり、Web上でのアンケートなどを用いてサイトから店舗への流入効果を推測したりすることは可能である。また、ブランド名や商品名、商品ジャンルや関連キーワードなど、企業側が想定したキーワードからの検索でサイト流入した数をゴールに設定してもよい。

(2)プロセスの明確化

施策の立案においても、最終的なゴールに向けて消費者がたどる3つのプロセスを明確にすることは重要である。消費者は商品を知ってすぐに購入するとは限らない。知ってからゴールである購入までのプロセスを明確にした上で、一連の施策を考え評価することが重要である。全ての施策をゴール達成数のみで判断してしまうと、「知らせる」ために行った広告がゴールに至っていないと判断され、プロセスが中断してしまうといったことが起こり得る。

従って、商品を知った消費者に対して、次にどのような施策を打てば、ゴールの購入まで誘導できるかという「つながった施策」として、各施策を考えるべきである。例えば、商品を知った消費者には試供品を提供する、競合商品との違いや強みを伝えて購買意欲を高める、といった施策が考えられる。

施策の順番や組み合わせ、相乗効果などを明確にしながら、消費者がゴールへ向かうプロセスに応じた施策を検討する。これにより、どのような施策を通じて消費者がプロセスを進んでいるのかが判断可能になる。その施策によって、消費者の行動が最終的な購入というゴールに至らなくても、消費者のプロセスを次の段階へ進めた施策として評価できる。

(3)KPIの測定

各プロセスのKPI(Key PerformanceIndicator:重要業績評価指標)を最後に設定する。これは各プロセスにおける目標を決めることにほかならない。「知ってもらう」プロセスであれば、目標は広告に触れてもらうことなのか、サイトを訪問してもらうことなのか定義する。これにより、その施策によって消費者が次のプロセスに進んだのか、別の施策が必要なのかを判断できる。

さらに可能であればKPI の目標値も定義する。施策が目標値を達成しているかどうかは、施策を継続すべきか判断する重要な指標になる。また複数の施策が絡む場合、各施策でのKPI は比率や割合にするべきである。施策ごとに予算や目的も異なるため、ゴール達成数での比較は評価が難しい。ゴール達成数/サイト誘導数といった割合をKPIとすることで、施策の効率性が分かるようになる。

以上が施策立案の流れである。

全体のフローには、プロセスとKPI が明確にされており、かつ施策が消費者をプロセスに沿って進めるものとして機能しているか、KPIを達成しているかどうかが可視化できるものとなっていることが求められる。

各施策の事例

3 つのプロセスそれぞれにおいて有効な施策を紹介する。

(1)「ものやサービスを周知する」ための施策

この段階は、ゴールに到達する見込みが高い消費者に訪問してもらうことが求められる。以下の2 つの施策が有効である。

① Run of Network

リーチ可能な全消費者を網羅して、広告を配信する施策である。広告配信を、全消費者からゴールを達成するだろう消費者へ自動的に絞り込んでいく手法だ。

仮説に沿ってペルソナを作成し、ターゲティングを行ってから広告配信する方法では、有望な消費者を取りこぼす可能性が出てくる。Run of Network ではペルソナを限定せず、全消費者を網羅するので、有望な消費者を取りこぼす可能性は低くなる。

② Look-A-Like

ゴールを達成した消費者と類似した消費者をターゲットに、広告を配信する手法である。ゴールを達成した消費者に近しい消費者であるため、必然的にゴールに達成する可能性が上がる。また、似ている消費者であってもサイトを訪問しているとは限らない。そのため、この施策では、有望な新規消費者に商品やサービスを知らせることが可能となる。

重要なのは、商品を知った消費者が、ゴールに至るプロセスのどの段階にいるのかを可視化しておくことである。消費者がどのプロセスにいるのか把握し、次に進んでもらうための施策こそ、「欲しい、または利用したいと感じさせる」ための施策にほかならない。

(2)「欲しい、利用したいと感じさせる」ための施策

ここで必要なのは一人一人の消費者に対して伝えるメッセージを変えることである。そのためサイトを訪問した消費者への再訴求が施策のメインとなる。

① 行動リターゲティング

サイトを訪問した消費者を対象に、サイトにおけるその後の行動の違いによって訴求するメッセージを変える方法である。例えば、サイトを訪問したがすぐに離脱した消費者と、商品の詳細まで閲覧したが離脱した消費者では、商品に対するモチベーションが異なる。この場合、サイトからの離脱理由を消費者の行動別に考えた上で仮説を作成し、施策を繰り返していくことになる。

②動的リマーケティング

消費者がどのようなサイトを訪問したかによって、さまざまな商品を訴求していく手法である。消費者のニーズに完全に合致した商品情報を届けることは難しいが、サイトでの行動を基に、消費者が求めているものにより近い情報を届けることは可能である。例えば、温泉旅行を検討している消費者がサイトを訪問し、目当ての商品情報を得られなかった場合、消費者はそのサイトからは離脱するが、サイトでの行動から関連した商品の情報を複数配信し、消費者が求めている商品に接する頻度を高められる。

この施策の目標達成度を測るには、商品を認知した消費者が、これらの施策によって再訪問して意図した行動をとっているか、また最後のゴールに至らせる施策につながっているかを把握することが必要となる。

(3)「ゴールに至らせる」ための施策

この施策の目的は、競合企業に消費者を奪われないことである。旅行の契約であれ、生活用品の購入であれ、消費者にとってどこで購入するかは問わないことも多い。購入意欲が高まった消費者が競合サイトで商品を購入してしまっては、今までの施策が全て無駄になる。そのため、消費者が購入しようとした瞬間、例えばWebでその商品を検索する時に、求められている商品やサービスの広告を表示することが必要となる。以前はリスティング広告をうまく配信することが求められたが、Google の検索アルゴリズムの変更により、現在はショッピングリスト広告が主流である。これはリスティング広告よりも上位に表示される確率が高く、さまざまな商品を表示できるためである。

ゴールに到達した場合、そこに至った消費者の属性(性別や年齢、興味・関心など)を調査できる。そこから、あらためて自社商品のユーザーのペルソナはどんな消費者なのかを知ることができる。この結果を「ものやサービスを周知する」施策につなげ、費用対効果を上げていくことが、つながりを意識した施策の立案にほかならない。

ツールを使った効果測定

重要なのは施策の効果測定であり、施策同士のつながりを分析できているかである。ゴールまでのつながりや相関を分析するには、分析ツールを活用するのが効果的である。

NRIネットコムでは分析ツールとして Googl eAnalytics 360 を推奨している。施策同士のつながりを分析でき、さまざまな分析が行えるツールとして、非常に有効である。デジタルマーケティングの費用対効果を最大限にするために、これらのツールの活用も検 討してはいかがだろうか。

邑川真也

執筆者 邑川真也

デジタルマーケティングの最適化を専門に行っています。
(デジタルマーケティング事業部 デジタルマーケティングコンサルタント)

本稿は、野村総合研究所発行の「ITソリューションフロンティア」2017年6月号に掲載されました。

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