─ Web戦略の効果検証とSEO対策の検討ポイント─(内原奈津子) 設計段階から考えるWeb戦略

20170317-1

Web戦略の効果検証や集客施策であるSEO(検索エンジン最適化)対策の検討は、開発フェーズ以降に開始する場合も多い。しかし、戦略に合った適切な検証の実現や、効果的なSEO対策のためには、設計段階からの検討が必要である。本稿では、事業活動に貢献するWebサイト構築のため、Web戦略の効果検証とSEO対策の検討ポイントを紹介する。


Webデザイン事業部 Webディレクター 内原奈津子

Webサイト設計段階におけるWeb戦略策定の重要性

Webサイトの構築を行うとき、一般的には、「システム」「コンテンツ」「マーケティング」と別々の体制で検討される場合が多い。その際、機能やコンテンツの設計を優先して進めていく一方で、Webサイトの効果検証に関する設計や、Google に代表される検索エンジンからの集客施策であるSEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)の設計は後回しにされがちである。

近年のマーケティング手法の多様化に伴い、戦略に合った効果検証やSEO 対策の実現に向けて、要件定義や基本設計時に検討が必要な事項は増加している。最終的なゴールや戦略を見据えて、Web設計の初期段階でツールの選定やSEO 施策の決定を行わないと、導入後SEO が活用できないシステムとなってしまうなどの恐れもあり、それは企業にとって大きなビジネス上の機会損失につながる。

チャネル全体を見据えた戦略の重要性

まずWebサイトの効果検証と運用戦略の策定について、自社製品を販売するECサイトを例に挙げ、販売チャネル全体を俯瞰した観点で考えていきたい。

(1)事業戦略全体におけるWeb戦略策定

Webサイトはいずれも「事業目標への貢献」を目指すものであるが、EC サイトや採用サイトなど、目的が異なれば、当然対象となるターゲットも果たすべき役割も異なってくる。また、同じ「商品販売」が目的であったとしても、企業によっては、店舗販売は富裕層をターゲットとしているが、Web販売は一般顧客層、といったように対象が異なる場合もある。

企業の持つチャネル全体の中で、自社のWebサイトの位置付けを定義することは重要である。「誰に対してどのようなサービスを提供するのか」「自社のWebサイトのあるべき姿はどのようなものか」をコンセプトとして明確にすることは、プロジェクト進行中に要件定義の取り捨てや対応レベルを決定するときの共通指針となる。これらは、IT 部門だけでなく、営業部門、経営部門、人事部門、カスタマーサポート部門、マーケティング部門、コンテンツ検討部門など、関連するステークホルダー(利害関係者)を含めた検討が欠かせない。

(2)KPIの設定による課題の抽出

Webのあるべき姿とターゲットを明確にし、構築するWebサイトの事業への貢献度を「見える化」することは、経営層にWeb戦略の効果を適切に伝える上で重要だ。そのために、Webの効果を客観的に見るための「指標」を明確にする必要がある。具体的には「ユーザーの行動・意識の変容」を「行動プロセス」という形で定義し、その変化を表す指標をKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)として計測対象とする方法が有効だ。

<まず、Web サイトの目的・戦略を踏まえて、「ターゲットの行動プロセス」を想定し、それぞれのプロセスに必要な「施策方針」を検討する。そして、ターゲットが行動したときに変動する事象を計測対象のKPI とする(図1参照)。例えばユーザーの行動プロセスの中で、「購入」という行動に対し「購入促進」を導く施策方針を立てる。この結果は「購入したか否か」という事象で表れるため、例えば「購入完了数」をKPI として設定する。さらに、ここに向かうステップを副指標として細かく設定する。図1では「購入」プロセスの副指標として「製品ページ閲覧数」「購入フォーム到達数」などを設定した。ここから読み取れるのは、購入フォームへ到達した購買意欲が高いと思われるユーザーの70%が次のステップへ進まず離脱していることが分かる。その原因として購入フォームの入力のしやすさに問題があるのではないか、といった仮説が立てられる。

こうした細かい指標の数値を取ることで「ユーザーがどのタイミングで購入をやめたのか」といった機会損失の課題が一連の行動の中で見え、場合によっては問題のあるページの改修の必要性が確認できる。

(3)KPIの取得方法の検討

計測すべきKPIが決定したら、どのように取得・集計していくかをあらかじめ決めておくことが大切だ。基本設計までに検討をしておきたい項目を次に挙げる。

・取得するチャネル(Web・電話・店舗など)

・利用するツール(アクセス解析ツール・売り上げ集計資料など)

・KPI を取得するための改修範囲(標準機能で可能か、アクセス解析ツールのカスタマイズが必要か、Webサイトの追加設計が必要かなど)

・集計方法(管理画面で集計するか、ドキュメントで集計するかなど)

取得方法によっては、解析ツールの実装やWebサイトの追加設計、連係システムの改修が必要な場合もある。プロジェクトの費用や期間に影響を与える項目であるため、事前に検討を行っておきたい。

(4)効果検証の運用設計

実際に計測したデータをビジネスに活用していくためには、KPI ごとの適正な検証期間や検証結果から導かれる改善施策のレベルに応じて検証サイクルを設ける。その上で、検証・改善を実施していく必要がある(図2参照)。

例えば、キャンペーンなどの短期施策に対しては、1 週間から3週間程度の短い期間で検証を行い、即時に改善を行うことで、利益向上に寄与することができる。一方、「購入したユーザーはどのページをどのようなルートをたどって見ているか」など、ユーザー動向の細かい把握には一定の母数がないと判断できない指標もあるため、数カ月単位の中期検証サイクルから、場合によっては年単位に及ぶ長期的な検証サイクルが必要となってくる。社内の事業報告や予算管理の期間に合わせて実施サイクルを検討することで、改善のための予算取得も行いやすくなるだろう。

「正しく理解できる」ための動的SEO対策

次にSEO 対策について考えていきたい。

(1)ユーザーの検索体験を最適化

かつてのSEO対策といえば、「トップページへのリンクの集中」「メニュー階層はなるべく浅くする」などテクニックにこだわり、検索するユーザーのニーズに合わない施策も多く行われていた。しかし、これらは検索エンジンから評価を下げられるようになり、現在は、「ユーザーの検索体験を最適化」するための施策が評価の対象となっている。検索する人にとって有益な情報が掲載されているサイトをより上位に表示させる志向となっているのだ。そのため、現在の検索エンジンに評価されるには、「ニーズにマッチした有益なコンテンツ」を「検索エンジンが正しく理解できる作り」でWebを構築する必要がある。

(2)動的ページの検索エンジン対応

動的にページを生成している場合、そのページを検索エンジンに正しく理解させるにはシステム開発を伴う施策も多い。例えば、検索エンジンはURL の構造を使ってサイトの構造を把握するが、システム上URL構造が情報構造と合致しない作りになっている場合、適切にサイトの構造を伝えられない。また、Webサイト内に似たようなページが多いと検索エンジンの評価が複数ページに分散、もしくは下がる可能性がある。このため、検索エンジンに「どのページを評価させるか」を伝える仕組みもシステム上考慮する必要が出てくる。「canonical 属性」「alternate属性」での対応がその一例だ。canonical 属性は重複ページがある場合、検索エンジンに優先させるべきページを伝える機能、また、alternate属性はスマートフォンサイトURLの存在を検索エンジンに伝える機能を持つ。

(3)表示速度の向上

画面だけではなく「ページの表示速度」など、サーバーやデータベースに関わる要素も影響を与える。Googleは2012 年にページ表示速度がランキング要因の1つであることをすでに公表している。

自社のビジネスにマッチするユーザーに検索サイトで正しく自社を認知させ、サイトへ来訪したユーザーには有益な体験を提供することは、営業機会の獲得につながる。設計段階からSEO 対策を考慮し、成果を高められるようにしたい。

Web戦略は設計から運用までを見据えた横断的な視点が重要

ここまで述べてきたWeb戦略の効果検証やSEO 対策は、今後さらに検討すべきポイントが増加してくるだろう。定型業務や大量作業を自動化するMA(マーケティングオートメーション)ツールや、人工知能(AI)を活用したデータマイニング(大量データを分析し、人が気付かない有益な知見を得る手法)など、新しい技術を使ったツールは次々に出てくる。それらを活用し、多角的な視点で戦略を打ち立てていくためにも、システム担当者だけでなく、初期のフェーズからコンテンツやマーケティング担当者、運用サポート担当者など、サイト構築に関わるステークホルダーが連携していくことが大切だ。

Webが今後ビジネスにおいてより高い効果をもたらすためには、Web戦略の具体的な施策の検討を、サイト設計、開発、運用までを見据えて横断的に行うことが何よりも重要である。

内原奈津子

執筆者 内原奈津子

Web戦略・施策の企画・立案を専門に行っています。
(Webデザイン事業部 Webディレクター)

本稿は、野村総合研究所発行の「ITソリューションフロンティア」2017年3月号に掲載されました。

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