-IoTシステム構築におけるAWS活用の勘所-(佐藤瞬) クラウドを活用したIoTシステム設計 2/2

sato-ec

AWSを利用したIoTシステム構築

主要なパブリッククラウドでは、IoT に必要な技術がサービスとして既に提供されている。ここでは、NRI がプレミアムパートナーとなっているAWS を紹介する。

(1) データを収集するクラウドサービス

まずは、モノからの大量のデータをいかにして受け取るかというところだ。これには、Amazon Kinesis Stream( 図1 参照。以下Kinesis Stream)、またはAWS IoT(図2 参照)が利用できる。

Kinesis Stream はストリーミングデータの処理を行うためのサービスであり、簡単に言えば、送信されたデータを一時的に保存してくれる。Kinesis Stream に保存されたデータは、一定期間いつでも取り出すことができる。Kinesis Streamでデータを受け取った後、別のアプリケーション(図1中のConsumer部分)でKinesis Stream からデータを取得し、リアルタイム分析やデータストアへの保存といった処理をすることができる。アプリケーションが自らデータを取得するため、処理量を調整でき、アプリケーション自身やデータストアに過度な負荷を与えることなく処理することが可能だ。

AWS IoTは、その名の通りIoTのためのサービスである。モノからのリクエストを受け、リクエストの内容に応じてさまざまなアクションを起こすことができる。また、AWS IoT はMQTTという双方向の通信を可能とするプロトコルを利用することができ、これによりモノ側へサーバーサイドから指令を出すことができる。さらに、モノが現在接続されているかといった状態の参照や識別など、モノの状態を可視化する機能もある。

モノから一方的にデータを送るだけであればKinesis Stream を利用し、サーバーサイドからモノ側へも通信を行いたい場合はMQTTを扱えるAWS IoT を利用する。この2 つのサービスはモノの数が数億あっても対応できるよう設計されており、非常に伸縮性・順応性が高い。大量のリクエストをいかにさばくかという問題は、これらのサービスを利用するだけで解決できてしまう。

また、AWS IoT とKinesis Stream を両方同時に使うことも可能だ。その場合はAWS IoTでリクエストを受け、AWS IoT からKinesisStream にデータを流す。Kinesis Stream にデータを送信する前に何らかの処理を行いたい場合は、このような構成も考えられるだろう。ただし、AWS IoT はKinesis Stream を単体で使う場合に比べ、コストが高くつく傾向にある。コストとのバランスを見つつ選択する必要がある。

(2) データを蓄積・分析するデータストアの選択

次にデータストアの選択だ。目的に応じて適したデータストアは異なる。大容量データであればオブジェクトストレージ(記憶装置の管理・利用方式の1 つで大容量データの保存に適している)、高速な読み書きが必要であればNoSQL(Not only SQL)、分析であればデータウェアハウス(膨大な量のデータを時系列に蓄積可能でデータ分析に最適化されている)、マスターデータなど整合性が重要であれば、従来通りRDBが適しており、これらを使い分けることが必要になる。AWSにおいては、それぞれのデータストアが以下の通りサービスとして提供されている。

  • Amazon S3(オブジェクトストレージ)
  • DynamoDB(NoSQL)
  • Redshift(データウェアハウス)
  • RDS(RDB) など

クラウドサービスが単なる仮想マシンやストレージであった時代は終わり、現在はさまざまなサービスを内包した巨大なプラットフォームと化している。クラウドサービスを利用することはシステム開発の効率化やコストの削減だけではなく、今までは実現できなかったことが、実現可能になるということでもある。

最新の技術動向の把握がIoTビジネスのカギ

IoTのような新しいビジネスが生まれるとき、同時にシステムの設計思想や実現方式も変化しなければならない。ビジネスとシステムには密接な関わりがあり、ビジネスの目的・規模によって最適なシステム設計も変化する。ビジネスをデザインすることと同様に、ビジネスに適したシステムをデザインすることが重要である。だからこそ、ビジネスを理解した上で、最新の技術動向をつかみ、それを使って設計・構築・運用できるシステムアーキテクト(システムの要件定義や設計の知識や技能を持った上級エンジニア)や、そのような人材を擁するパートナー企業の存在が不可欠となるだろう。

野村総合研究所(NRI)グループは、実際にAWSを利用したIoTシステムの設計・構築を行い、実運用に耐えうることを検証してきた。その知見を生かし、企業のIoT システム設計をサポートしている。

佐藤瞬

執筆者 佐藤瞬

AWSをはじめとするクラウドサービスを活用したシステムアーキテクトを専門に行っています。
(Webインテグレーション事業部 副主任システムエンジニア)

本稿は、野村総合研究所発行の「ITソリューションフロンティア」2016年9月号に掲載されました。

お問い合わせ

当社のサービス・製品に関するご相談やご質問、お見積りのご依頼など、こちらからお問い合わせください。